【国際部レポート 米国のB2B展示会~2022年第3四半期も強いリバウンドは続く~ CEIRのレポートから 】

 

国際部レポート

米国のB2B展示会~2022年第3四半期も強いリバウンドは続く~

CEIRのレポートから

                    日本イベント協会理事 寺澤 義親

 

1. B2B展示会のキャンセル率は引き続き低い

 CEIRのレポート(12/14/2022)によると延期された展示会を除くB2B展示会の2022年第3四半期のキャンセル率は3.1%と第2四半期の2.0%から微増となったが2020年第3四半期の97.8%2021年第3四半期の20.6%と比較すると大きく改善している。これは2021年第3四半期からの展示会の回復傾向が維持され2022年に入ってからの低いキャンセル率がほぼ定着していることを示している。

 

図1:B2B展示会のキャンセル率の動向



2.展示会パフォーマンス指標のCEIR Total Index2019年比で引き続き改善されている

 

低いキャンセル率と展示会の回復によりCEIR Total Indexはマイナス22.3%と2019年を下回っているが第2四半期のマイナス24.4%よりも向上している(図2)。ここでの総合指標はコロナでキャンセルされたイベントを含む形で2019年実績と比較されているが、2020年と2021年の第3四半期と比較すると大幅に改善していることを確認できる。

 一方2021年第1四半期から2022年第3四半期でキャンセルされたイベントを除き2019年比の総合指標を見ると(図3)2022年第3四半期はマイナス19.9%と落ち込みが少なくさらに改善された実績を示している。これはコロナ禍の制限下で開催された展示会パフォーマンスが大きく落ちていないと同時に2021年からの回復傾向はまだ不安定ながらも確実に定着していることを示している。

 

図2:リアルGDPCEIR総合指標(CEIR Total Index)の推移

   2019年対比、キャンセルされたイベント含む




図3:CEIR総合指標の推移(2021Q1から2022Q3

   2019年対比、キャンセルされたイベント除く




3. 総合指標のうち展示スペース、売上は改善、出展者と来場者は伸び悩み

 

 2022年第3四半期に開催予定だった展示会のうち0.38%は延期、3.04%はキャンセルされ、96.58%が予定通り開催された。またキャンセルされた展示会では約38%がデジタルイベントに変更されている。延期された展示会を除くと前述のとおりキャンセル率は3.1%となった。

 個別指標を2019年第3四半期比で見ると展示スペースはマイナス14.4%、出展者マイナス23.6%、来場者マイナス23.2%、売上マイナス18.0%となり展示スペース、売上は改善しているが出展者、来場者の回復が遅いことを示している。

 

図4:2022年第3四半期のCEIR総合指標

   (キャンセルされた展示会除く、2019年第3四半期対比)



4.米国経済のリセッション入りの懸念がある中で展示会産業は回復を維持する

 

 展示会産業に大きな影響を与える米国経済についてはリセッションに入るかどうかの議論があるがCEIRは米国GDPの第3四半期の回復と順調な労働市場からまだリセッション入りしていないと分析している。しかしながら連邦準備制度理事会のインフレ対策としての金融引き締めが経済を冷やし2023年中のリセッション入りの可能性は50%と見込んでいる。

 これについてCEIRのチーフ・エコノミストDr.Allen Shawは「2023年はチヤレンジングな年になる。B2B展示会のキャンセル率は極めて低い水準にとどまり、展示会のパフォーマンスの改善傾向は続き、業界の完全な回復は2024年になる。

 CEIRがモニターする14業種のうち今年は政府支出、消費財支出、サービス分野は好調を維持、一方IT, 建築、建設分野は展示会業界平均と比較して停滞する」とコメント。又CEIRCEO Ms.Cathy Bredenは「オミクロンの影響を受けたが我々の調査結果やCEIR総合指標からはB2B,Face to Faceへの強い復帰が確認され、すでに展示会の復活は始まっていることが示されている。さらにビジネス関係者と出展社はマーケティング、販売、ビジネス情報を目的にB2B展示会チャネルに戻っていることも確認できている」とコメント。

 

5. 個別の展示会動向

1) CES2023

 デジタルとITを基盤とするCES15~8日、ラスベガスコンベンションセンター、Venetian Expo等の会場で開催された。主催者(Consumer Technology Association)によると今年は50か国から3,200社・団体が出展、このうち海外からは1400社が出展。

 メディアも69カ国から4800人が来場して全体では昨年の45,000人から115000人越えの参加者に。参加者の内4万人は海外140カ国からになっている。展示面積は合計で220万平方フィートで昨年より70%増加して米国で開催される最大イベントになっている。

 例年500社を超える中国からの出展社はコロナ規制で減少し、韓国よりも少ないが日本より多い出展者数となっている。ジェトロはVenetian 会場のスタートアップエリア(Eureka Park)にジャパンブースを構え主催者のイノベーションアワード受賞の7社を含め36社の出展支援を行った。


                                                                    ブースイメージ:ジェトロサイトから


2) World of Concrete2023

 

  CESと同様に米国では1月早々に開催される有力なB2B展示会の一つで、2021年にはリアル開催の先駆けとして6月に開催された経緯がある。Informa markets がコンクリート建設用設備・サービス、セメント、建設資材等の業界団体と共催して117~19日に開催。会場はラスベガスコンベンションセンターのNorth,Central&South Hallで屋外もある。約1500社が屋外含めて約65,000㎡に展示出展、来場者は昨年の37,000人越えの約6万人とコロナ前の水準が期待されている。

 業界では2023年は厳しくなるとしているが、会期中に記者発表したポートランドセメント協会は「2023年は過去13年で初めてセメント消費が3.5%減少する。特に民間建設活動と個人住宅市場は停滞減少する」と予測。同協会のチーフエコノミストも「FRBの利上影響はすぐには出ないが長期では打撃になる。雇用市場、GDPが堅調なので2023年にはリセッションになるとは考えていないが、成長がスローダウンするインフレーションになる」とコメント。

 

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